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FUTABA+のあかさたな

FUTABA+京都マルイ店の本と雑貨とそれ以外

10月19日 岸辺の旅 

マヅラ

先週土曜はテアトル梅田で黒沢清『岸辺の旅』を。
古い映画を観ているとき、ふと「この映像に映っている人たちはもうこの世界にはいないし、この映像に映っている場所もいまはもうない」という当たり前のことを思い出して奇妙な感慨が訪れることがある。映像はいつも現在形で進行しているから、その映像に心が同調したり、真に受けたりすればするほど、いま観ているこの世界がもうない、と言う端的な事実が思い出されるとき、「いる」と「いない」のその落差に驚いてしまう。かつて確かに生きていた人々を今ここに生き生きと蘇えらせる映画と言うメディアは、死んでもういないはずの人間が生きている人間と同じ世界にいることをきっと現実よりもすんなりと観る人に受け入れさせるのだろう、生者と死者がともに旅するという有り得ない設定のこの映画をファンタジーではなく(幽霊の話なのに)地に足の着いた人間ドラマとして観て、いたく感動してしまった。

映画が始まるまえ、初めて行った大阪駅前第一ビルのマヅラ喫茶店は、大阪万博の年に創業した喫茶で、円形に配置された座席や一面鏡張りの柱、ポップな装飾の数々が居並んだ、過去が夢見た未来のような異空間で、珈琲はたぶんずっと変わらないのだろう一杯250円(!)。少し前までいたLUCUAやグランドフロントからほど近い場所にありながら、突如現れる生きた文化遺産でタイムスリップした気分を味わいながら、出版されたばかりの『生きた建築 大阪』(140B)を携えての大阪建築めぐりへの思いをあらたにしたのでした。


(Y)

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