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1月29日 『初稿・死者の書』着。 


折口信夫という人は、なんだか恐いけれども美しい物語を書く人なんだろう…となんとなく思ってはいたが、時折気に掛けて書店で本を開いてみても、「読めない」と思ってその度断念していた。
ところが先頃、漫画家の近藤ようこさんが『死者の書』を漫画にしてくれた。今もコミックビームで連載なさっているが、その『死者の書/上』が出版されてから、折々にその表紙を見ている内に、
(あ、私はなんだか今なら読めるような気がする)
と再び手に取って開いてみたら、なるほどなんだか読める。それが、年の瀬も迫った辺りの事であったが、それ以来、すっかり彼にはまってしまって、彼の言葉から言葉へととりとめもなく旅をしている。
だが、別に内容を判って読んでいるとは私にも思えない。
ただ、古の人々の心や死生観、失われた世界を求めて日本中を巡り歩き、人々を訪ね歩いていた彼の憧憬、求めないではいられない切実さなどが、わからないなりに文章の端々から感じとられてくる、それだけで、なにやら心地良いのである。

ところで、先日私の手元に届いた『初稿・死者の書』ですが、これは作品が単行本化された際に構成などに大幅の変更があったようで、私は雑誌初出版が気になって気になって仕方なく、かなり悩んだあげく、此もいずれは絶版になってしまって手に入らなくなるんじゃ、という恐怖に背中を押されたのでした。

去年の春分の日の事であつた。入り日の光りをまともに受けて、姫は正座して、西に向つて居た。日は此屋敷からは、梢坤によつた山の端に沈むのである。西空の棚雲の紫に輝く上で、落日は俄かに転(くるめ)き出した。その速さ。雲は炎になつた。日は黄金の丸になって、その音も聞えるかと思ふほど鋭く廻つた。雲の底から立ち昇る青い光りの風――、姫は、ぢつと見つめて居た。やがて、すべての光りは薄れて、雲は霽れた。夕闇の上に、目を疑ふほど鮮やかに見えた山の姿。二上山である。その二つの峰の間に、ありありと荘厳な人の俤が、瞬間顕れて消えた。後は真暗な闇の空である。山の端も、雲も何もない方に、目を凝して、姫は何時までも端座して居た。/ 『初稿・死者の書』折口信夫著 安藤礼二編 (図書刊行会)



これ一冊読み切ったら、少しは、気持ちも落ちつくでしょうか。
(よ)


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